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 計画1:熊見櫓(くまみやぐら)

 火災を見張る火の見櫓(ひのみやぐら)に倣って言えば「熊見櫓」であるが、アラスカなどで食糧を保存しヒグマなどに食べられないようにするタワーに類似させてつくる予定。床の高さは6m前後。これは、だいたい三階から見下ろす高さ。内部の広さは4〜6畳ほどの小屋を考えているが、強度を確保するために、半分ツリーハウスとする計画だ。この櫓は、昼夜を問わず安心してヒグマを高所から監視する小屋として、あるいは夜間はベアドッグを櫓下の要所に待機させヒグマの接近を感知しつつ、サーチライト等各種資材で追い払うこともあるだろう。バッファスペース・オオカミの尿・ベアドッグなどとともに、電気柵の開いた武利川でヒグマにストレスをかけることになる。
 その設置位置・高さなどは、万が一危険なヒグマが出現した場合のハンターの射座として合理的に機能するように設計する。4本の足(柱)には直径40p以上の立ち樹を2本以上利用し、高さ2-3m程度にステンレス板を巻いてヒグマのよじ登りを防止する。また、ここから地面を見下ろす風景の枝を100mに渡りできる限り切り払い視界を確保する。「いこいの森」では、もし仮にヒグマの射殺許可が取れたとしても危険度が高く水平射撃がほとんどできない。高所から俯角をとって撃ち下ろさなければダメなのだ。理想的には、最も確実な場所にヒグマを誘導し三叉射撃をおこないたい。誘導には現在訓練している夜間パトロール・追い払いが生きるはず。三叉射撃とは3方向から狙って狙撃する方法で、要人暗殺にたびたび使われる手法だが、このようなエリアのヒグマの場合特に、急所を確実に狙って即倒させるには一方向からの射撃では不十分だと私は思う。
 狙撃台として機能する熊見櫓とはやり過ぎではないかと思われる方もいるだろう。しかし、リスクマネジメントとはそういう種類のことでもある。ハンターの実力低下云々が取り沙汰されることは多いが、まずそれぞれの現場が問題が起こらないよう努力すること。そして、その努力が実らず、もし仮にヒグマの射殺をハンターに依頼をする場合は、彼らにとって最も安全で有利な条件を提供する努力をすることは、むしろ当然のことだと思う。生粋のクマ撃ち不在のエリアでは特に。様々な想定を持つ多機能櫓だが、2012年には取りかかりたい。



 計画2:カプサイシンと電撃の関連付け―――人為的忌避物質をつくる

 ヒグマの遺伝的(本能的)忌避物質に関してはオオカミの尿をテスト中だが、意図的に電気柵の電撃と関連付けて学習させヒグマをコントロールすることを模索してきた中で、当初から有力候補であったカプサイシンを選択した。カプサイシンはベアスプレーの有効成分であり、ベアスプレーの刺激とも直接的に関連付けられるので好都合でもある。カプサイシンと聞いてピンとくるのは、ヒグマの専門家と若い女性くらいだろう。この物質は唐辛子から抽出されるが、ヒグマの撃退・追い払いなどよりダイエットに使われることのほうが圧倒的に多く、需要が多いので安価にもなっている。オオカミの尿が本能的・先天的忌避物質だとすれば、これは環境的・後天的忌避物質であり、ヒトによって意図された忌避物質である。
 通常、電気柵に触れるヒグマは、電気柵のワイヤーと電撃を関連付けて学習し、電気柵を忌避するようになる。そこに、カプサイシンという物質(におい)を割り込ませようというのがこの方法論だ。ベアスプレーのカプサイシンはヒグマに対する撃退物質であって忌避物質ではなく、むしろ誘引物質たりうるが、この関連づけによって「つくられた忌避物質」となる可能性が十分にある。
 「いこいの森」を囲う電気柵のメンテは完全で8500〜9000Vを常時維持している。これだけ高い電圧をシーズン通して維持し続ける電気柵というのは、北海道広しといえどなかなかないし、だからこそ関連付けに十分な効果が見込める。これを利用しない手はないのだ。作業としては、この電気柵の下に点々とカプサイシンポットを配置するだけの話だが、夜間「いこいの森」に接近したヒグマは、まずカプサイシンのにおいを嗅ぐだろう。順調にいけば、次いで電気柵に触れ十分強烈な電撃をくらう。嗅覚の動物ヒグマは視覚・聴覚より嗅覚で学習することが多く、電撃とカプサイシンのにおいを関連付けて学習する可能性が高い。その学習をしたヒグマは、カプサイシンのにおいだけで遠ざけることが可能になり、電気柵の弱点をカバーしたり、あるいは他のワンポイント的な防除に応用することも可能になる―――これが筋書きだが、こればかりはやってみなくてはわからない。関連づけを強化するために他の幾つかの工夫も並行する予定である。
 カプサイシンかどうかは別にして、この関連付けを精度高くおこなったうえで用いたヒグマのコントロールが、将来、北海道で存分に威力を発揮するはずだ。電撃を介した関連付けに一つ鬼門があるとすれば、下に示す
「ヒグマの電磁場感知説」だ。

関連付けを征する者がヒグマを制す―――ヒグマは磁場を感知しているか?

 ヒグマが電気柵を忌避・敬遠するようになるのは、正確に言えば、電気柵と電撃を関連付けて学習するからである。とすれば、仮にリボンテープで張った電気柵で電撃を学習したヒグマは、ポリワイヤー電気柵では忌避効果が薄れると考えられないこともない。私自身、この論から、電気柵を導入する場合はエリア全体で統一した資材を選ぶのが有利と認識してきた。しかし、ヒグマの感覚器官に磁場を感知する能力が存在するとすれば、話は一転する。つまり、電気柵に触れて電撃をくらったヒグマは、その直前に電気柵を視認しつつ磁場を感知していたことになり、電撃と磁場を関連付けて学習している可能性がある。その磁場を起こしているのは電気柵ワイヤーを流れる電流(電子)であるから、電気柵の材質形状に関わらず同様のパルス電流が流れていさえすれば、一定の効果をもたらすことになる。
 電気柵の前でヒグマがどのような行動をとるか、それをポリワイヤーとリボンテープ2種類のワイヤーと幾種類かの電圧を用い、先述のようにデジタルセンサーカメラ(動画)で確認していけば、ヒグマの電磁場感知の可能性について少しずつ判明してくるに違いない。仮に同一のヒグマが電圧0Vと9000Vのワイヤーの前で異なる行動をとったとすれば、「磁場関連付け説」が信憑性を帯びてくるだろう。そしてもしそうなれば、カプサイシンの関連付けの効果が薄れるものの、別の目論見の一つが現実となる。つまり、「いこいの森」に設置されている理想的な対ヒグマ電気柵(ポリワイヤー)が、ヒグマ教育用電気柵として機能し、このエリア全体に対して威力を発揮していくことになる。





 

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