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初対面。一応、両者の反応を見るために、愛はケージに入れておこなった。特に過剰な警戒もなく、相性はまずまずに思えた。
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その確認をおこなった後、愛をケージから出した。
GSDも日本では一応大型犬の部類だが、こういうところがノースの凄いところだ。どんな奴かもわからない初対面のGSDの鼻先に、平然と穏やかな表情で顔を差し出した。「どうするね?噛みつくかい?」と愛に言っているわけだ。これは、オオカミのパック内での喧嘩で興奮した個体に優秀なアルファがやる動作だが、圧倒的な自信がないとなかなか。
竜は不安、愛は緊張。
たったこの一瞬で、ノースと愛の関係は決した感があった。 |
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そのあと、サブスペースと運動場に3頭を出したが、ノースと竜は、愛をあちこち連れて行き、ここのルールを一通り説明しているようだった。この写真で教えているのはトイレの場所、らしい。
これがあるので、確かに私はいろいろ楽をできるのだが、ノースの場合、自分の感性や世界観で意図的に良からぬことを教え、仔犬が問題児化することも十分あり得るので、注意が必要だ。 |
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その夜から、私の小屋でくつろぎ眠る犬が三頭に増えた。魁と凜を失ってから、どことなく寂しげだったこの部屋が、少し賑やかになった。
愛にとって、新天地の先住犬ノースと竜は一生を変える大きな存在だっただろうが、ノースと竜にとっても、愛は、にわかに授かった宝物のように思えていた気がする。 |
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翌日からは、運動場で朝から晩まで「遊びと教育の日々」になった。
写真は、ここに来て初めて、愛がノースに注意をされたところ。こんな叱り方は、オーストラリアでは仔犬期以外に経験したことがなかったのだろう。愛はあからさまに目を見開いてビックリしていた。 |
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このとき、まだ愛は1歳足らずで30sほどだったが、逆にノースはピークを過ぎていたものの70s台の体重があった。ここでは最年長で熟練度も一番だったので、愛のことは子犬のように思えていたようで、よく遊び、よく教えてやっていた。ノースの子煩悩は折り紙付きだ。 |
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不安定な雪面や斜面上で愛がすぐ転んだり、ひっくり返るのを、ノースは不思議そうに見ていた。そしてすぐ愛の運動能力に対応し、愛に合わせて走るようになった。
そのほかにも、ノースや竜が当たり前にできることが、愛には困難だった。そのあたりの能力が、長年かけてヒトの手でスポイルされてしまったことなど、ノースは知るよしもないだろう。 |
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とにかく愛を喜ばせたり驚かせたりする面白そうなことを考えて実行に移した。これは、竜の教育にもなる。 |
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ノースは、それまでほとんどやったこともない「引っ張りっこ」も、愛に対してはよく相手をしてやった。
竜は、「そんなくだらない遊び、やっていられるか」と、そっぽを向いていた。 |
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そして、愛に何か悪い行動があれば、即座に注意した。
「注意」とは叱る一歩前の教育方法で、表現は「諭す」でも「柔らかな叱り」でもいい。ノースと竜が愛を本気で厳しく叱る場面というのは、ついに私は見ることができなかった。完璧にコントロールされた牙使いで注意するので、それが来ると、だいたい愛は照れ笑いをつくった。 |
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竜は基本的に愛を甘やかしたが、このようにノースと竜が揃って愛を叱りに来るときは、よほど何か愛がマズい行動をとった場合だ。
一見、激しい叱りのように見えるが、ノースや竜の牙使いの力加減などは、激しい動きの中でも繊細かつ正確そのもので、ふにゃふにゃで皮も薄い仔犬を叱っても、仔犬が怪我をしたことなど一度もなかったし、生卵をそっと牙で咥えて持って逃げることもできる。 |
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「甘やかしの竜」を部屋で撫でてやると、あちこちにかさぶたができ、何カ所かは血が出ているのがわかった。愛の牙加減ベタで、毎日細かい怪我を幾つもしているからだ。
愛がわざとそうしているのではないことを悟ったノースは、寝転んで愛に自分の手を噛ませ、その加減を教えた。手首の骨張ったところに愛の牙がきているのだから、少しはストレスを感じてもよさそうだが、ノースはいつも涼しい顔でそれをやった。愛も一生懸命教わっていたと思う。 |
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やはりノースは、愛を仔犬のように思っているようだ。 |
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もともと「いいところのお嬢ちゃん」的だった愛だが、ノースと竜のおかげもあり、徐々にうちの掟を知り、やり方を知り、遊びと叱りの中で二頭の先住犬への信頼を固めていった。それにつれ、愛はGSDらしからぬ動きや表情をすることも多くなった。これでいい。
この信頼がないと、相思相愛もクソもない。そして、仔犬が産まれた直後、愛の神経質から仔犬を巡ってトラブルが起きる可能性もある。 |
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とにもかくにも、愛はここに馴染んだ。 |
第2段階:愛と竜をノースと私で見守る
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そもそも、こういう変な動きも、普通の訓練系GSDはしない。 |
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基本的に、竜は愛の能力をよく観察しながら、それを上回るレベルの動きとスピード で愛を引っ張った。愛も、それによく食らいついていったと思う。 |
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この雪山の急斜は、愛が駆け上るには少し厳しすぎた。その斜面をトラバースして愛を誘う竜。
不安定な雪面では、ただ手脚に力を入れて蹴っても、雪が崩れるだけでまともな推進力は得られない。愛は牙使いの繊細さ同様、雪面を無駄なく転ばずに走る力加減がきっちりできるようにならなければならなかった。GSDの愛は、一体全体どこまでノースと竜に近づくことができるのか・・・ |
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愛がようやく登れる斜面を、竜は駆け上ったあげく勢い余って宙に浮く。 |
一方、「甘やかしの竜」と呼ばれるようになった
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愛の前でわざと転んでみる |
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倒れてみる。 |
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ひっくり返ってみる。 |
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また、転んでみる。 |
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愛にガブガブされているとご満悦だが |
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前日の傷に牙が触れると、ちょっと痛いときもあるらしい。
それは至極当然だが、自業自得なので笑って眺めた。 |
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しかし、また倒れてみる。 |
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立ち上がっても、ほっぺを噛ませに行く。
正直、見ているほうが恥ずかしい。 |
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私やノースは、竜の甘やかしぶりを訝しく思ったりしていたが、本人らがそれでいいようなので、まあよしとした。竜という犬を信頼してみよう。 |
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愛の山練開始 ※山練=山の訓練 |
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愛がここに来てひと月ほど経過した頃、そろそろヒグマが冬眠明けしてきそうな陽気になったので、竜との相思相愛計画は続行したまま、私は愛を連れて精力的に山へ入った。 |
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沢は、もうすでに朗らかな音を立てて流れていた。 |
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この山に暮らす、愛の知らない強獣を、なるべく強く印象づけるよう、特に大型のヒグマの足跡を追った。 |
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こちらもかなりの大型だ。
後ろ足の踏み跡がちょうど愛の顔くらいあるし、足跡列の左右幅が70p程度か・・・ |
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オーストラリアからここに来た愛は、ずっと「雪と氷の惑星」に連れてこられたと思っていたに違いない。しかし、春の終わりにもなると、この山でも雪はすべて融けて消えた。
「どうだい?愛。ここなら故郷の風景と似ているだろう?」
そんなことを時々愛に話しかけた。
(山上農地の大平高原にて) |
ちなみに |
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竜の場合、仔犬の頃「ヒグマの冬眠穴暴き」がマイブームだっただけに、新しいヒグマの跡を追うのはお手のもの。のどかな午後の散歩をしているように楽しげに、オス成獣の踏み跡をトレースしていく。
こういう追跡では、ハンドラーが気をつけるべきは、まず鳥類の動き。そして、キツネやエゾクロテンの痕跡密度が増えたりしていないかどうか。そして、ほかのヒグマの足跡列の有無。行く手にシカ死骸が転がっている可能性があるからだ。 |
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愛と竜を休ませるために、きわどい現場にはヒグマ感知センサーとしてベアドッグから外したノースをオンリーシュで連れていくこともあったが・・・外した理由が肝心なときににわかに、そして強烈に出た。私と意見が分かれたときに従わないという、ベアドッグとしての最大の欠落事項・・・ノースにとって服従はチョモランマより高いハードルなのだろう。仕方ない。
ノースは竜よりオオカミ特性が強く、何頭かのヒグマが歩き回っている場所で、ヒグマなどそっちのけでコレになる。
「これは僕のだ、おみやげに持って帰る!」
「ダメだ!離せ!そこに置いていけ!」
「イヤだ!」
「うるさい、黙れ!」と。
もう食べるところも乏しい残骸であろうがシカ死骸である限り、自分の邪魔さえしなければヒグマなどどうでもよく、そのシカ死骸を我が物にしたくなるらしい。
ヒグマというのは、自分が蚊帳の外で、私と犬がひどい剣幕でやり合っていると、コッソリ退散する性質もあることが経験的にわかってきているので、こういう場合は、近くのヒグマに聞こえるよう、山にこだまするような大声を張り上げてノースを叱る。
この争いに参入してくるヒグマがあれば、まさに「北方圏の三角関係」―――シカを巡るヒトとオオカミとヒグマの競合関係の体現になるが、これまでそういうヒグマに合った試しはない。 |
第3段階:雪が融け、春から夏へ
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雪が融けて夏が来ても、竜と愛の状況は路線が変わらなかった。ノースと私は怪訝に思うこともあったが、竜はあくまで愛を甘やかし、可愛がった。
ただ、竜とノース私に結果的に鍛えられ愛の運動能力が上がってきたため、竜もノースも、愛のガブガブ遊びに対して、腕や手で押さえたり、首をひねったりしてダメージを小さくする工夫をするようになった。特に竜は、そこまでして愛を遊んでやりたいのだから仕方ない。任せることにした。 |
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本当に大丈夫なのか? |
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愛はノースにまで容赦なく行くようになった。ノースはだいたいほっぺで愛を受け止めつつ、腕で愛を払うように押さえながら防御しているようだった。
この写真では、竜はノースを心配しているのではなく、ガブガブされているノースを羨ましがっているだけ。 |
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アスファルトや整備された広い芝生の運動場ならともかく、障害物や起伏に富んだフィールドでは、MTタイヤを履いたクロカン4WDと乗用タイヤの軽自動車くらい差がある。
ただ普通に走るだけではすぐ愛に追いついてしまうため、何かいい手はないか思案中。
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特にトリッキーな急転回などになると、圧倒的に差がある竜と愛。竜はいろいろ試行錯誤していたようだが、最終的にこのおちゃらけた走り方を開発した。一本の後脚を使わず走る走法。これだと、フルスピードの愛とちょうどいい勝負になるらしい。 |
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まったく器用なものだが、こういう変則的な走り方ができることが、恐らく、どんな地形でも苦にせず走り回れる理由だろう。身体の構造的な差異以上に、脳の相違だと思われる。
どうせなら、前脚も一本封印して走ってもらいたかったが、それは竜でも難しいのか・・・? |
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これもちょっとした竜の裏技。通常、犬が進む方向と脊椎は同じ方向を向いている。竜はスピードを落とさず跳んだ後、身体をひねって体勢を変え、着地と同時に鋭角で別の方向にそのままダッシュできる。
30m四方程度の狭い運動場で遊んでいるときも、こういう裏技・小技があちこちにちりばめられるので、追っている愛だけでなく、カメラを構えた私もファインダーで追い切れないことが多々ある。 |
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あまり竜が余裕でからかうように走るので、愛の意欲もそのうちMAXになり、スピードも切れもよくなった。 |
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GSDのアイデンティティを脱ぎ捨てたか? とても訓練系GSDとは思えないウナギのような動きになることも、愛は厭わなくなった。
そうそう、行儀よくやってちゃ、竜やノースには対抗できないからね。犬の型や枠に拘らず、自由な発想で臨機応変に必要な動きを取り入れる。 |
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竜に引っ張られているうちに、愛のGSDとしての運動能力はどんどん上がり、複雑な地形での+アルファの運動センスも磨かれていった。 |
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絆のほうも。 |
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暇があれば、3頭を連れて夕焼けを眺めに出かけることもたびたび。
犬など所詮獣だという意見はあるが、そりゃあどうかな。 |
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ケージがあまり好きでないはずの竜が、愛についてケージに入っていった。
「閉めるからな、閉めるからな、本当に閉めるからな!」
そう言って、ケージのドアを閉め、ロックをかけたが、竜は出たがるどころか、この態度と表情。
愛は窮屈で迷惑そう。
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パックの教育や竜との相思相愛に並行して―――愛の単独訓練
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うちのパックに愛を馴染ませながら、運動能力や知力を高めつつ、愛にはありとあらゆる経験をさせてやった。
よくいるウサギだが、GSDに有利なフィールドであっても、このウサギにはGSDのスピードではまず追いつかない。
「追いつかない」という経験を積ませることで、このウサギに対していちいち追う衝動が起きることを防ぐ目的もある。 |
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愛に対してだけは、MSBDや狼犬とは異なる育成方法を一部取り入れ、部屋に戻ってもそんなやりとりをおこなった。
ノースと竜は、見たこともない私の犬育成方法を面白がって見ていたが、どことなく、自分らにもやって欲しいと思っているふうでもあった。 |
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ハンターに呼んでもらい、捕獲したヒグマに愛を対面させた。興奮状態にはならず、一定の緊張感で目の前のヒグマをよく観察していた。ここで怯えて尾がまたに入ったり、逆にギャンギャン吠えかかったり牙を剥いて威嚇したりだと私も困っただろうが、次のステップに進むためのテストとしては十分及第点だった。 |
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ヒグマの探索でも、さらに愛の集中力が増した。 |
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手頃な若グマを感知したのでマークし、しばらく調査してから愛の練習台にすることとした。 |
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MSBDに何かをやらせるとき、「行け!」ではなく「ついてこい!」というスタンスで、まずは自分がお手本を示す方式にこだわったが、それは愛に対しても同じだった。そのデモンストレーションがこのドラレコからの写真。愛はこのとき、クルマの中で見学。
これで、だいたいお膳立ては終了だ。
教えるべきは、
1.興奮せず冷静に、終始用心深く立ち振る舞う
2.ヒグマは追い払うべき相手であって敵ではない
3.優位に立ち追い払ったあとは深追いしない
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2月に生後10カ月でここに来た愛は、4カ月で「若グマの追い払い」まで私のコントロール下でできるようになった。恐らく、これがベアドッグの育成では最短記録で今後更新されることはないだろう。
ただ、愛の追い払いには限られた条件があって、その条件が「平坦で障害物のない場所」だった。この写真でも、直後に若グマは急斜面を駆け下ったが、それをチェイスしかけた愛を、私は斜面に入るところで止め、即座に自分のところに戻した。そんなことができるのが訓練系GSDの強みだ。
愛が最短記録を樹立できた理由は、ひとえにGSDの訓練性能であって、残念ながら、そこから先に訓練課題を進められる可能性はどうしても見いだせなかった。
愛と竜の遺伝子を持つ子に望みを託した。 |
愛と竜でヒグマの現場へ訓練に
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お盆あたりになると、デントコーンのせいで高密度にヒグマが歩き回る空間ができあがる。このトドマツ林もそのひとつで、8〜9月に10〜15頭程度のヒグマが確認される。そこへ竜と愛を連れて行き、オフリーシュの訓練をするよう心がけた。
愛1頭だと、確かに単独の若グマの追い払い程度はできるようになったが、単独でないヒグマもあるし大型オス成獣もあるため、ヒグマとの遭遇を考えるとどうにも心許ない。要するに、相思相愛計画の最終段階として、竜は愛の護衛犬としてつけた。 |
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この2頭を見ていると、訓練というよりデートかハイキングの風情が漂うが、ヒグマが近隣に居ないという証拠だろう。もし遭遇した場合は、竜が好きなようにどうにかしてくれるだろうし、さもなくば、私もベアスプレーを片手に加勢する態勢。
本来は、このような浮かれた犬を連れてくるような場所ではないが、この年ばかりは例外とした。 |
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ノースが待つ自宅小屋に帰還する2頭。
帰ったら、また運動場で3頭の親睦会。 |
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予定される秋の交尾期が近づいたので、自宅から少し離れた木陰に恵まれたトドマツ林の中に、急遽、愛と竜専用の場所を単管とシカ用ネットフェンスでつくってやった。この2頭なら、もう任せておけば万事順調に進むだろうと。 |