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ヒグマのアドバンス


概略

 「ヒグマのベーシック」に書きまとめたことは、比較的既知の事実か、多くのヒグマ専門家が認知している内容に留まっていると思うが、一部、私自身のヒグマ観察から一歩だけ進めて仮説含みで書いたこともある。

 一方、現在、北海道で起きてきているヒグマ問題は、従来より研究されていたヒグマの生態学だけで理解し対応するのは困難なため、ヒグマの社会学・教育学(心理学)などに踏み込んだアプローチの仕方をする必要もあるかも知れない。

 「ヒグマのアドバンス」では、特に2005~2022年の北大雪・丸瀬布における調査研究・対策などから得られた観察より、現在までに解明が進んでいないヒグマの社会学・教育学などに関して「理論・仮説」という形でまとめた。ここでの理論・仮説は、既存の科学的事実と矛盾しない形で構築する努力をおこなったが、実際のヒグマ対策に応用できるものとした。

 例えば山でヒグマに遭遇した場合、科学的な事実だけから対応しようというのはどだい無理な話で、目の前にいるヒグマの態度・表情など状況をできるだけ冷静に観察しつつ、完全に科学的には証明されていないいろいろを念頭に判断して行動するしかない現実がある。これは、様々なヒグマ対策でも同様で、理論や仮説というのは、その検証と同様に重要な部分と考えられる。


力学と準テリトリー 
 ヒグマにはテリトリーはないが、優位・劣位はあり、それぞれのヒグマ間に「忌避の力学」が働いている。そのヒグマ間の力学に、ヒトを含め「ヒトとヒグマの力学」を規定し、様々な問題を説明する基盤とした。

捕獲リバウンド現象
 不用意に1頭のヒグマを捕獲した場合、その空いた空間でその後起きる様々な現象を捕獲リバウンドと名付けたが、捕獲リバウンド現象は、ヒグマが不在の空間に徐々にヒグマの活動が戻ってくる際のシンドローム(症候群)として捉えることができる。

ヒグマの社会学
 ヒグマの社会の構成は、ヒグマの力学も作用しできあがっているが、その社会には未成熟なものから成熟したものまで様々で、そのヒグマ社会のありようによって、ヒトとのトラブルの種類や頻度も変わってくる。現代の特に人里周りのヒグマ社会は、捕獲によって攪乱され続ける傾向にあり、なかなか成熟した社会にならないが、そのことで無警戒グマの出現率も高まっている部分もある。

ヒグマの教育学
 ヒグマの知能レベルから、ヒトの児童心理学と教育学を参考にし、どのように何を働きかければ若い成長過程のヒグマの意識を変えられるかについて、示唆となるよう書きまとめた。特にヒトへの警戒心や忌避を植え付けることを「忌避教育」と呼んでいる。

ヒトとヒグマの関係学
 ヒトとヒグマの共生とは、ヒグマの管理というより、お互いにどのような意識で見、節度を守って隣り合わせに暮らしていくかという視点で、どのような関係性が好ましいかを提案した。


12+240+(18+780+18)+12=1080  780=28+724+28
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