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ヒグマは知能が高い
好奇心と学習能力
昨今の世界のヒグマ研究者によれば「ヒグマの知能はイヌと霊長類の間」とされている。ヒグマを捉える場合、イヌやヒトのあれこれから類推しうる部分が多くあるが、ほ乳類の中でもかなり高知能な動物である。
知能が高いというのは、特に若い時期に強い好奇心となって現れる。旺盛な好奇心によってあれやこれやと試してみて、失敗したり成功したりしながら学んでいく。つまり、Try&Error/試行錯誤を積極的におこないながら学んでいくため、「知能が高い」を「学習能力が高い」と言い換えてもさほど間違っていない。個体ごとに経験によって学習し変化・成長していく生きものなので、結果的に各種の個体差が大きくなる。恐らく、ヒグマの個体差はヒトのそれより大きい。メディアによる画一的な情報や統一された教育が存在しないからだ。
記憶と類推能力
また、ヒグマの高知能には記憶力・類推能力までも含む。つまり、脳に刻まれた記憶のデータから、まだ起こっていないことを想像したり推測したりすることが可能だ。「類推」という言葉自体に論理的に考えるイメージがあるが、ヒグマの場合はThinkではなくFeelの次元で類推的なイメージを抱く。例えば、実際に痛い思いをしていなくても「痛そうだ」とか、「恐そうだ」「気持ちよさそうだ」「美味しそうだ」と推測・想像で行動を決めてくる。
さらにまた、ヒグマは予測不能なその時々の「気分」によっても行動を変える。
これらのことから、「イヌとヒトの双方に通用するセオリーがあれば、それはヒグマにも適用できる」というかなり強い法則的な自説を私自身は持っている。ヒグマを捉える場合「イヌやヒトから類推しうる」というより、同様の心理メカニズムを持つイヌやヒトから「類推すべき」なのだが、ヒグマの行動をコントロールする場合には心理学的なアプローチでおこなうし、若グマの教育ということも発想自体がイヌやヒトから帰結され、実際の方法論・技術も仔犬や子供の教育・躾のセオリーをベースにしている。また例えば、遭遇時のことを考えても、ヒトと遭遇した時間・天候・場所・人数などに加え、そのヒグマの性格やちょっとした気分によってもクマ側の行動は変わってくるため、なかなかバッタリ遭遇対応の単純で確実なマニュアルが作れないのだ。
インテリジェンス・フロー
下の図は、ヒグマに関して「インテリジェンスフロー」と私が呼んでいるチャート図で、「知能が高い」というところから、どんな事象が派生するかを簡単に表した図だ。ヒグマに関して描いたものだが、ヒトにもイヌにもクジラやサルにも当てはまる。実際はもっと複雑で多岐に分かれて矢印が入り組んでいるのだが、とにもかくにもこの簡略版インテリジェンスフローを念頭に考えてもらうと、今後のページは理解がスムーズだと思う。
この「インテリジェンスフロー」がクマを考える場合の要(かなめ)となる。例えば、このフローに上の「クマは食いしん坊」を考え合わせると、我々が山に入ってゆくときに「何をしたらマズイか」、あるいは、どういう場合に「何をしなければならないか」は自ずと見えてくるだろう。
ヒグマの場合、人為物を食べることを経験・学習することで「執着」「常習化」が起こり、それを漫然と放置すれば行動の「エスカレート」に至る可能性も高い。「エスカレート」というのは、食物への執着のあまりヒグマの最大の戦略であるはずの警戒心が希薄になり、ヒトに対して攻撃的になったり、もともと「こそ泥タイプ」だったのが「ゆすり・たかり」の状態を経て徐々に「強盗タイプ」に変化したりすること。カムチャッカにおける星野道夫の死、そして史上最悪のヒグマ事件と言われる苫前の「三毛別事件」には、人為物を食べ慣れた状態からのエスカレートが深く関与していると考えられる。
このことからも、人里でも山でも、とにかくクマには「人為物の味を覚えさせない」ということが、ヒト側の初手の戦略ということになる。ここでつまずくと、あとの対応は一気に難しくなる。
また、同様の理由で、ベアカントリーでの対ヒグマリスクマネジメントは「遇ったらどうするか?」ではなく、「どうやったら(悪いシチュエーションで)遇わないようにできるか?」というところに、まず焦点を持ってこなくてはならない。悪いシチュエーションとは、概ね距離に関してだろう。30m以内だとだいたい状況は良くない。50mでも黄信号だろう。距離以外では、例えば、交尾期(6~7月)のオスとか、親子連れのクマ、手負いグマ、シカ死骸に付いたクマなど、これらの特別な状況だと、仮に距離が50mでもこちらの対応いかんで切迫した進み方をするかも知れない。
※実際のベアカントリーにおける注意点などについては「ベアカントリーへようこそ」で述べようと思う。
補足)ヒグマを理解するための因数分解と因果律
私自身の理解の方法のひとつとして古い畑の物理学・数学に影響された方法を持っていて、解りやすい例でいうと因数分解がある。例えば、ヒグマを観察していてこういう事象が起きていたとする。
「def、3cde、2bdf、6bcd、aef、3ace、2abf、6abc」
これをただ漫然と見ていても先に進まないのだが、全部「+」でつないで「=(a+d)(2b+e)(3c+f)」と因数分解すれば、三つの要素から成り立つ事象と理解することができる。
観察した事象は「=(de+2bd+ad+2ab)(f+3c)」と現れ方を変えた形で現場で観察もされ得る。
実際、起きる事象というのは加算的で「+」でつなげることができがちで、その起きた事象のメカニズムは乗算的で「×」で結ばれることが多い。ヒグマが起こしている行動の本質的な生態学的・心理学的メカニズムに環境要素を加味して考えることで、複雑に見えるヒグマの行動がスッキリ理解できることは多々ある。また、後述する「若グマの忌避教育」に関しても、ひとつひとつの刷り込みが乗算的に合わさって、最終的に一頭のヒグマの意識と行動パタンを変える結果に結びつく。予測を正しくおこないやすい、などなど。因果律に則り、何が原因となる要素で、何がその要素の絡んだ結果として出てきた現象なのか。このサイト自体、因数にあたるヒグマの基本要素に注目して読んでもらえるとわかりやすいと思う。
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ちょっと休憩:ヒグマの学習システムを理解する
2006年から私の活動のメインは「若グマの忌避教育」になっていて、いつの間にかライフワークになりつつあるが、学生時代にアラスカの原野で活動を開始してから30年以上クマに関して何をしてきたかというと、とにかくあれやこれやとヒグマに働きかけをして、その働きかけをクマの側がどう受け取り、何を学び、強化して意識内に定着させるか?という観察・テストだ。意識が変われば、その結果行動も変わる。その集積されたテスト結果からヒグマの学習についての理解を進めてきたし、今なお続けている。
まだ学生の頃の話だが、その時、私はアラスカの森で直径40㎝強のスプルースをチェーンソーで切り倒そうとしていた。くさびを幾つか打ち込み最後の詰めにかかるとき、クセで首を左右に向けて安全確認をしたが、目に入ってきたのは明らかに興味津々にこちらを見ているクマだった。40mか30mかよく覚えていないがとにかく近い距離だった。そのクマを向き直って相手をし始めても、スプルースはすでにそよ風が吹いたら倒れそうな段階だったので、試しに知らぬ顔でコンコンとくさびを打ち込みそのスプルースを地面に倒した。地鳴りのような大きな音があたりにこだまし、すかさずクマのほうを見たがクマはすっかり姿を消していた。私の野営地では毎日現地調達のサーモンステーキやシカの焼き肉ばかりだったので、「来るか?来るか」としばらくそのクマの到来を待ち構えていたが、ついに二度とそのクマの姿を見ることはなかった。
他愛のないお話しに聞こえるだろうが、この中にも意味深な幾つかの要素が含まれていて、チェーンソーという文明の利器の効果、ヒグマの好奇心、類推能力の高さ、などなど。そして、結果として、このヒグマは一度も痛い思いや電気の衝撃やカプサイシンの刺激を経験することなく、毎日煮炊きをする私の野営地から遠ざかり近寄らない個体になった。そしてその効果は少なくとも数年。恐らく、その森のどこかで私と出遭っても、bluff
chargeをかける余地もなくそそくさと逃げただろう。
このような不可抗力的な偶然のシチュエーションからでも、若グマに劣らないこちらの好奇心に任せてあれこれやることで、いろいろな事がわかる。そして、このような他愛のないテストの結果の無数の累積によって、ある状態でクマの移動ルートを少しだけ動かしたり、完全にその場所から遠ざけたり、いろいろなコントロールが可能になる。
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