up
 since2004
side

 
 羆塾(ひぐまじゅく)とは
   yajirusi#羆塾設立趣意
   yajirusi活動内容/活動履歴
   yajirusi塾生/ベアドッグ・拠点紹介
   yajirusiベアドッグ
 ヒグマの保護管理活動
   yajirusi羆塾のヒグマ対策
    yajirusi調査/分析~対応判断
    yajirusi教育&防除
    yajirusi捕獲
 ヒグマのベーシック
   yajirusiヒグマの食性と年周期
   yajirusiヒグマの知能と学習能力
   yajirusiヒグマの一生
 対策ベーシック
  yajirusiベアカントリーへようこそ
   yajirusi出遇わないために
   yajirusiもし出遇ってしまったら
  yajirusi被害を防いで暮らす
   Type1:中山間地域・農地帯
   Type1:都市部周辺・観光地
 ヒグマのアドバンス
   yajirusi力学と準テリトリー
   yajirusi捕獲リバウンド現象
   yajirusiヒグマの社会学
   yajirusiヒグマ教育学
   yajirusiヒトとヒグマの関係学
 フィードバック/普及啓蒙活動
   yajirusiフォーラム/レクチャー
   北大雪カムイの森
   出版物・電子書籍
  ヒグマ問題を抱える行政の方へ
 ヒグマ関連情報
   yajirusiおすすめの本/LINKS
   yajirusi丸瀬布の自然と観光
 
  2004~2013羆塾・旧サイトより
   yajirusiエッセイなど
   yajirusi2013ヒグマ対策と公開情報
 

sika



Pet4You.jpのエコ活動
白滝ジオパーク
「GIO」と「ECO」のコラボレーション
白楊舎
ベアドッグの育成でお世話になっています

環境との調和をめざすリゾート
オススメ!
side


ベアドッグ/拠点紹介


※この先、敬体(ですます調)から常体(だ・である調)に変えて書きます。ご了承願います。

 2017年を境に任意団体に戻り本来のスタンスを取り戻した羆塾は、各所の励ましと理念・感覚を共にする賛同者の力を借りて新たなるトライを開始した。現在のところ特にNPO等の法人格取得は考えておらず、原点に戻ってこれまでおこなってきたベアドッグによる各種ヒグマ対策の試行錯誤を続け、ヒグマという動物をより深く正確に知りながらその制御や教育の精度を高めていくことを目標とする。

 腰を据えなおした北大雪山塊においては、遠軽町が推進する「白滝ジオパーク」を現場で担う目的で2017年に設立されたNPO法人「えんがぁるジオ倶楽部」、および丸瀬布の北海道らしい自然の中で子供の自然教育を自然との共生のもとでめざして2019年立ち上げ予定の財団法人「Moebius(メビウス)」の協力アシストグループとして、ヒグマの調査・パトロール・追い払い・若グマ教育などヒグマ対応全般を引き続きおこなっていくこととなったが、無警戒な若グマ教育のきっかけともなった「いこいの森-マウレ山荘アウトドア観光エリア」全体の安全対策に関しては、これまで通り各種ヒグマ対策をおこなっていくか、対策からいったん手を引き鳥獣行政・観光行政のオンブズパーソンとしての役割を果たしていくかは、丸瀬布総合支所・産業課の動向次第となっている。ただし、2018年に見るように、幾つもの観光がクロスした観光エリア内に危険な状態が発生すれば、即時ベアドッグを投入してここを訪れる観光客の危険回避に動かざるを得ないだろう。

 2006年より若グマの忌避教育の主要エリアの一つとして重要だった「教育エリアC」と呼んだ「いこいの森」南側の7ヘクタールほどの森林は、2018年「北大雪カムイの森」と名付け、北端1ヘクタールは財団法人メビウスの活動に使われるが、残りの空間は「ヒグマの管理エリア」としての機能を持たせていく。この新たなる管理エリアは従来の教育エリアCに準じ、従来通りヒグマと私とベアドッグが互いを学び合う「教育空間(educational spase)」として機能させ若グマの行動改善がめざされるが、現場のヒグマ対策の専門官の人材育成をおこなう現場として、あるいは将来的に一般の方がベアカントリースキルを学ぶための空間としても提供していく構想ではある。

 また、現場の活動や研究と同時に合理的なヒグマ対策の普及も重要と考えられるため、行政・民間問わず、また地域を問わず、依頼があれば調査・対策アシスト・助言・研修講師など、できる範囲で要望に応えるよう努力していきたい。


拠点(ベース)

湯ノ沢ベアドッグベース:
所在地:遠軽町丸瀬布上武利438
電話番号:0158-49-5034
携帯電話:090-2072-2959(岩井)
e-mail:alpha@beardog.jp
Website:www.beardog.jp





 北大雪山塊の麓に位置し、2005年羆塾発足時から周辺10㎞以内を中心にヒグマの各種調査がおこなわれ、合理的なヒグマ対策の模索がおこなわれてきた。この谷は古くからのやまご(きこり)には「クマの巣」と呼ばれるほどヒグマの活動が多い場所である。2009年からはその谷の環境を生かして魁と凛2頭のベアドッグの育成をおこない、普及活動の拠点ともなった。2018年からは、プロトタイプとして期待をはるかに越えた能力を発揮したベアドッグチーム魁と凛のフィードバックとして、ベアドッグの一般化・普及・人材育成の拠点のひとつとなる。


カムイホロケウの森ベアドッグベース
所在地:〒遠軽町丸瀬布上武利
電話番号:
携帯電話:(岩井)
e-mail:beardog@kamui-forest.org

Website:www.kamui_forest.org
 




 2006~2018年までヒグマと私とベアドッグがそれぞれお互いを学習する場として「教育エリアC」と呼ばれ存在してきた空間を、私は「北大雪カムイの森」と名付けた。カムイの森の北側の一角は2019年設立予定の財団法人メビウスの児童教育の取り組みの場となるため完全なベアフリー空間をつくる予定だが、そのミンタルの森を外側でガードするようにカムイの森の中につくられたのが「カムイホロケウの森ベアドッグベース」だ。ミンタルの森の対ヒグマ・リスクマネジメントを担いつつ、調査・パトロールの拠点として、またあるいはカムイの森全域のヒグマ対策の緊急出動拠点として設置されている。カムイの森とその周辺のヒグマ調査・パトロールは原則ベアドッグ2~4頭とともにおこなうが、よりきめ細かい観察や対応を可能にするためカナダの騎馬警官の手法を取り入れ、ヒトの移動手段はジムニーから馬に変更する予定もある。将来的には、馬上のヒグマ専門官2名とそれぞれ一頭のベアドッグが最小単位となり、ヒグマの調査から追い払いまでに対応するイメージがある。なお、施設の設置から調査の方法まで、羆塾の基本理念である「
ECO Harmony Program」に則りおこなわれる。

「北大雪カムイの森」概要(画像クリックで拡大)


 北側に「いこいの森」、南にデントコーン農地を配した武利川に沿った7ヘクタールほどの空間には3~11月にヒグマが活動し、8月~9月には15頭前後の行き交う特殊な空間である。そのため、2006年に開始した「若グマの忌避教育」では最重要エリアとなってきたが、今後ともベアドッグと私の訓練エリアとして、また周辺のヒグマの教育エリアとして機能する。北大雪カムイの森はもともと「教育エリアC」と設定されたクマと私とベアドッグが学び合うための重要な空間だったが、その植生と位置づけから三つの森に細分化した。
 最北の「ミンタルの森」には「北大雪自然センター(仮称)」が建設段階にあり、ミンタルの森の周囲は農地用の電気柵の流用ではなく、いわゆるヒグマの「ビックリ突進」による侵入にも対応した人身被害防止用の電気柵によって完全なベアフリー空間(クマが入ってこない空間)をつくる予定。この1ヘクタールほどの林地は、特に子供たちが安心して北海道らしい自然に触れ学ぶ場所として提供されるが、医療技術者・医師資格者によって緊急医療態勢も整えられる。
 北端のミンタルの森をベアフリー空間にするため従来の教育空間は縮小する形にはなるが、残りの森「カムイホロケウの森」「キムンカムイの森」はそれぞれトドマツ林・混交樹林から成り、この二つの森において従来よりさらにきめ細かなヒグマの把握やベアプロファイリングをおこない、ヒグマの移動経路のコントロールと性質コントロールをおこなっていく予定だ。8~9月、原則的にカムイホロケウの森ベアドッグベースではヒグマの24時間対応をおこなう。
※ミンタルの森は2020年運用開始予定だが、全容に関しては未確定の部分が多い。

補足)ミンタルの森とヒグマ情報館(仮称)
 ミンタルの森を主宰する財団法人メビウスの趣意には「児童の自然教育」とともに「自然との共生」が高々と掲げられている。そして、そのミンタルの森は北海道でも随一のヒグマの大生息地のど真ん中に設定された。必然的にヒグマ対策さらにはヒグマとの共生が具体的にめざされるべき課題となってくるが、そもそも羆塾およびベアドッグの取り組みに対する評価が基盤になってこの地で開始される取り組みのため、ベアドッグの普及やベアドッグハンドラーの後継者育成まで視野に入れた運営がなされるだろう。
 また、羆塾の調査によって得られたヒグマの出没などの情報は随時メビウスに提供する予定で、その情報はミンタルの森で詳細を一般公開され、ベアドッグを間近で見学し接することもできる。



羆塾のベアドッグ(BD)とコンパニオンドッグ(CD)

 羆塾では、幼犬の頃よりヒグマ対策に特化した躾・訓練をほどこしたベアドッグを、調査から追い払いまで様々な場面で利用している。ベアドッグの適性を持つ犬は非常に限られ獣猟犬・狼犬・護羊犬などの一部が候補の挙げられるが、猟犬ベースのベアドッグは北米などですでにトライされており、羆塾ではさらなる可能性を見出し2009年に狼犬を採用した。ただ、狼犬ならどんな個体でもベアドッグになれるわけではなく、育成の各段階で特に気質・性格・訓練性能を精査しベアドッグとしての育成を中止し家庭犬(コンパニオンドッグ:CD)として生涯を暮らす犬も羆塾にはいる。
 2009年、魁(Kai)に始まったベアドッグの模索は手探りながらかなり積極的な試行錯誤となったため、魁と凛のチームが予想をはるかに越えて素晴らしい働きをしてくれた一方、現在まで半数がベアドッグ育成ラインから外れ家庭犬となった。未踏峰登山と同じで、山が厳しければ厳しいほど引き返す判断も重要になる。すべての仔犬がベアドッグとして育成できない現状は致し方ないことと考えている。ベアドッグは警察犬・災害救助犬などと同様使役犬ではあるが年間を通してヒグマ対策官と毎日の暮らしを共にする相棒・家族の意味合いが強く、仮にベアドッグを落第しても、ふだんの暮らしはベアドッググループと家庭犬グループは分け隔てのない家族としてのものになる。


Beardog01・魁(KAI)♂ 
2008年11月19日生まれ~2016(秋田・Seriors Story) 
 2006年から開始した若グマの追い払い(教育)は轟音玉・威嚇弾・ベアスプレーなど考えつくあらゆる方法を用いておこなったが、それぞれに弱点があり、また調査やパトロール・追い払いの作業自体がかなりリスキーなものとなって踏み込めない領域を感じていた。2009年夏、旧白滝の農地で若グマの追い払いに失敗し射殺判断をしたのを機に、ベアドッグを導入する決断をしたが、ヒグマ対策に犬を伴うのは合理的だとわかっていても、狼犬の性質も十分解っておらずすべてが手探り状態ではじめられた。初代ベアドッグの魁は予想・期待をはるかに上回る能力を発揮し、ヒグマ対策のみならず、羆塾で群れ飼いをする狼犬パックの素晴らしいリーダー犬となった。人懐こく甘えん坊。現在なお、私のベアドッグの理想像と考えている。


Beardog02・凛(RIN) ♀ 2010年1月生まれ~2017(千葉・USK)
 魁のアシストをおこなうパートナー犬として迎え入れたメスで、魁と私でベアドッグとして育てたと表現できるだろう。生後2ヵ月でここに来た当初は、ものすごく気と我の強い幼犬だったが、成長するに従いこちらの意を汲んで行動できる犬になり、魁の最良のパートナーとなった。もともと警戒心が強くシャイ気質を持っていて、幼少の頃は「ビビ凛ちゃん」とも呼ばれていたが、私に突進を開始したオス熊に対して、間髪入れず突進で返して斜面上方に追い払い切ったのは凛が1歳の時だ。その事件のあと自信をつけ、私は「ビビ凛ちゃん」と呼ぶことは二度となかった。ヒグマに対して物怖じせず立ち回る姿は、メスながら雄々しい。また、狼犬としては小柄ながら後続犬の厳しい母親役も担った。



家庭犬・North(ノース)♂ 2011年4月生まれ(千葉・USK)
 魁と凛の成長が評価されブリーダーから贈られた個体だが、「限りなくオオカミに近い」と言われつつ、血統図がないためそのオオカミ率に関して正確なところはわからない。「これはオオカミだ」との意見もあるが、正直なところ、現段階でオオカミともそうでないとも科学的レベルで断定できない。魁や凛はその運動能力においてジャーマンシェパードやオーストラリアンシェパードを優に上回るが、その魁や凛が足元にも及ばない規格外の運動能力を持っている。高さ225㎝のシカ用ネットフェンスを笑いながらワンタッチで越え、林道なら時速70㎞に迫るスピードで走る。運動能力に劣らず非常に高い知能・感覚器官を持ちヒトとも繊細なやりとりができる一方、臆病で警戒心・自我・自立心が強く、そこがネックとなりベアドッグとしての育成は早い段階で断念した。ノースの知力・感覚能力・身体能力を持る相棒ができたらどれほど素晴らしいかとつくづく思うが、なかなかうまくいかないものだ。

 トマトの原種というのは非常に高い栄養価を持っている反面、小さくて美味しくもないと聞いたことがある。ヒトが大きくて甘いトマトを欲したため品種改良が盛んにおこなわれ、現在は数百種の品種が世界にはある。イヌとその原種のオオカミにもまったく同じことが言えるが、大きくて甘いトマトを作る際に犠牲にした栄養価が求められる状況というのがあって、ヒグマ相手の作業というのがまさにそれにあたる。狼犬は確かにヒトが気軽に食べて美味しく甘いトマトではないかも知れないが、自然の合理性を踏襲した卓越した能力を潜在させている。



家庭犬・Rhea(レイア)♀ 2013年4月生まれ~2015(千葉・USK)
ノース同様ブリーダーがハイブリッドウルフと呼ぶ狼犬のラインだが、幼少の頃、脳にダメージを負い手足が不自由で目もほとんど見えないハンデを背負った。MRIなどの精密検査を受けた北大動物医療センターで先天的な脳の異常が判明し獣医は殺処分を提案したが、私はそれを拒否してうちに迎え入れた。
 狼犬はオオカミの社会性を色濃く引き継ぎ「孤立」が最もこたえる犬種のため、魁・凛・ノースのパックに入れ分け隔てなく育てた。もちろん、当初からベアドッグとしての教育はせず、家庭犬として暮らしたが、何をするにも純粋無垢でまっすぐ。そして何より生きるエネルギーをレイアからはひしひしと感じた。私はどの犬からも多くを学んできたが、最も本質的なことを教えてくれたのはレイアかも知れない。獣医の予測通り長生きはせず2歳でレイアの命は消えた。  
 


Beardogとして育成中・竜(RYO)♂ 2015年1月生まれ(千葉/USK)
 ノース・レイア同様、USKからベアドッグに育成するよう贈られた個体。つかみ所のないイヌ的な部分と臆病で警戒心が強いオオカミ的な部分がそれなりにバランスされているように思うが、ノースやレイアに比べると要領がよく、悪く言えばずる賢い。その賢さを、私との関係性をきっちり作っていい方向に向けられればいいベアドッグになるだろうが、現段階では、熟練したクマ撃ちに「ちょっと優しすぎるねえ」と言われる性格で、今後どうなるかは未知数だ。竜がここに来た2015年、管理上の内部事故が生じ必要な時期に教育をおこなえなかったため、いずれにしても晩成型は免れないだろう。ただ、竜の骨格構成は希に見る素晴らしさだ。是非羆塾のベアドッグの基礎として生かしたい。



ベアドッグ・愛(Ai)
German Shepherd ♀ 2017年4月生まれ(オーストラリア/Von Darcor
 オーストラリアでは、広い放牧地の羊の管理を任されるハーディングドッグとしてジャーマンシェパードは本来的な使役犬として用いられるほか、警察犬として高度な作業を要求される傾向が強く、数は少ないながら一部のブリーダーは本家ドイツやチェコスロバキアから親犬を輸入して基礎とし、それぞれの理想を求めてブリーディングがおこなわれている。その犬舎の一つがVon Darcorであり、愛(Ai)は2018年2月日本へ入国し厳冬の丸瀬布湯ノ沢ベースに迎え入れられた。
 日本やヨーロッパでは普通、訓練系のジャーマンシェパードは訓練競技会や警察犬の資格取得が目的化しているが、オーストラリアの面白いところは、犬の価値や目的が本来のジャーマンシェパードに近く、あくまで警察・放牧の実践的な活動であることだろう。ドイツやチェコに比べIPO類の訓練資格への依存度が低く、実践の現場で犬は評価され、繁殖に用いられる経路が存在している。VonDarcorの犬がその典型で、原則IPOの資格を取得していないにもかかわらずポリスドッグ、ハーディングドッグとして現場から信頼され、また家庭犬としても非常に成功している。私自身、高いポテンシャルを持つ訓練系のシェパードを訓練競技の世界に閉じ込め生涯をそこで送らせることには違和感や反駁を感じてきたし、訓練が目的化していないこの実践的なスタンスには賛同できる。羆塾ではもちろんオージー流でいく。
 Aiは、Lex(下述)とは逆に、あえて訓練犬としての訓練を施さずできるだけ素材のまま羆塾に迎え入れる方向とした。




BDとして育成予定・Lex(レックス)
G.Shepherd♀ 2016年10月生まれ(チェコ/Od Hradcanskeho rybnika
 チェコでは、ドイツのジャーマンシェパードを随時採用しつつ、少し異なった優れたブリーディングラインができ上がっている。チェコスロバキアンウルフドッグがFCIに認定されていることからも推察できるように、チェコでは高度な作業をこなう使役犬への意識が高く、ブリーディング・訓練ともに意欲が非常に強い。
 レックスは代表的なチェコのラインで、訓練犬として生後一年半、最短期間ですでにIPO1を取得した。その学習能力の高さ、訓練性能の高さは折り紙つきだ。ただ、生まれてから、指示を待ちその指示通りに正確に動くいわゆる訓練犬・訓練競技に特化した訓練漬けの育成が為されているため、むしろ正反対の育成スタンスを持つうちの環境にどれくらい馴染むかどうかがカギとなると思う。犬としての基本的な感情や意欲を取り戻し、服従訓練がどこまで厳格に入れられるかが課題となるだろう。

※プロテクション(Protection):日本では「追求(tracking)」「服従(obedience)」とともに「防衛」として訓練課題でFCIのIPO(国際訓練試験)では基本課目となっているが、多くの犬がこの三つの課題を訓練し、だいたい生後1歳半でIPO1を取得する。が、プロテクションはあくまでヒト相手の訓練で、ヒグマに対して決しておこなってはいけない行動のひとつ。私の知る限り、優れた訓練競技犬がヒトに対して攻撃的という例はないが、できれば生涯忘れてもらいたい行動パタンのひとつだ。オオカミの血はヒトによってイヌに与えられたこの攻撃性を明らかに低下させる効果があるが、ベアドッグにはBH(同伴犬訓練試験)的なヒトに対する親和性・柔和性のほうがより重要な要素である。
ex)プロテクション訓練(Lex生後9ヵ月);https://www.youtube.com/watch?v=J8tBtQcMnno


家庭犬・Sarah(サラ)
German Shepherd ♀ 2016年8月生まれ(ドイツ/Schiffslache
 狂犬病の関係で、原則、ヨーロッパなどから日本へ犬を輸入する場合、最低でも7ヵ月の待機期間を要する。生誕の地ドイツからアメリカに渡って待機していたSarahだが、私はその預け先の選定を誤った。預け先の衛生管理・躾の能力ともに劣悪で、虐待行為もあったようである。様々な人・犬の団体の助けでなんとかその場所から保護し、2017年秋に日本に入国した。
 不測の事態に見舞われつつドイツから日本へ到着したSarahだが、アメリカに渡る前のドイツの6ヵ月がよほど良好だったと見え、支援者の元で心身ともに順調に回復しつつある。
 ベアドッグとしての育成は当面延期の判断を下したが、遺伝的な素性はすこぶる優秀で賢い犬なので、竜との交配を念頭におきながら、できる範囲でいろいろを教え、カムイの森で生涯楽しげに暮らすことになるだろう。何と言っても、「サラ」というのは「サラ・コナー」からとった名だ。

※日本でシェパードというとブラック-タンのどっしりした感じの犬を思い浮かべると思うが、ジャーマンシェパード自体がWorking dog(訓練系)とShow dog(ショードッグ系)にきっちり分けられて繁殖がおこなわれ、原産国ドイツをはじめチェコなどヨーロッパの国々、オーストラリアなどで訓練系の中からブラック-タンの個体を探すほうが難しいほどブラック~セーブル系の個体が占めている。上記3頭はセーブルと呼ばれる毛色で訓練系シェパードの外見としては比較的平均的な個体。
 愛・レックス・サラのブリーディングライン(血統図)に関してはこちら(png)を参照。



現状と今後
 2016年暮れに魁を失い、年が開けて間もなく凛も魁を追うように急逝したため、2017年はベアドッグとして育成中の竜(Ryo)を急遽現場に投入しなんとか凌ぐことができたが、次期ベアドッグチームをつくるべくその基礎として訓練系ジャーマンシェパード(GSD)をヨーロッパなどから揃える計画を進めてきた。3世代前までのペディグリー(血統・家系図)を精査しながら、その犬舎のブリーディングスタンス、飼育環境などを含め合わせてドイツ・チェコ・ロシアそしてオセアニアから探したが、まず第一に重要なのは遺伝子疾患を持っていないこと。いくら優秀でも遺伝子疾患がある犬は、犬もハンドラーである飼い主もとてもつらい。第二に、遺伝的に頭脳が明晰で訓練性能が高いこと。次世代以降にオオカミの血が入る前提があるため訓練性能、特に本能を自ら抑える能力は重要だ。その要件を満たす個体からさらに幾つかの条件で絞り込み羆塾に迎え入れる個体を決定した。輸入される個体は世界でも選りすぐりの訓練系のシェパードで、ベアドッグのアシストはもちろん、リスクの軽微は調査やパトロールはいかんなくその能力を発揮してくれることが期待でき、ベアドッグのブリーディングラインの基礎としても秀逸と考えている。

 2010年より狼犬の育成とベアドッグの育成を同時進行で注意深くおこなってきたが、プロトタイプとして手探りで育成した魁と凛のベアドッグチームで試行錯誤に明け暮れたため、次世代のベアドッグの育成が十分にできていなかった。対ヒグマの能力に加え、他犬や人への親和性・柔和性からも初代の魁がほぼ理想的なベアドッグの姿と思われるため、今後の狼犬のブリーディングは育成方法とともに魁に近づける方向性だけは明確になっている。

概要を言えば、ジャーマンシェパードベースの狼犬を少しでも緻密に知るために
1。訓練系ジャーマンシェパードのベアドッグを育成し、実地で検証を通してシェパードというイヌを知る。
2。ハイブリッドウルフと命名された極めてオオカミに近い個体をテスト観察しオオカミをより正確に知る。
3。1と2で得られた理解をもとに狼犬の繁殖および狼犬のベアドッグ育成方法・チーム編成などを確立する。
以上の三本柱になる。

ジャーマンシェパード、狼犬ともに、仔犬の段階で4つの方向の育成ラインが考えられ
  1。ベアドッグ(BD)グループ
  2。調査・番犬グループ
  3。訓練競技犬グループ
  4。家庭犬(CD)グループ
に分けられる。
 概念図は以下の通り。
 原則的に狼犬・GSDともに適材適所の考えを取り入れ、「向かないイヌに無理な作業をおこなわせない」という方針を堅持する。そのため、図のように狼犬・GSDそれぞれのラインの同胎をおもに気質的な特性をもとに生後2~3ヵ月までに幼少期に三つのタイプに分け、譲渡・育成をおこなう。
 特に繁殖に関しては、基本的にベアドッグとしての実地訓練と実際の対ヒグマ作業を見ながら狼犬・GSDそれぞれのベアドッグ同士でおこなうが、気質や身体特性の調整の意味で訓練競技犬・家庭犬からも繁殖に用いる個体を選択する場合がある。





現況:2019年1月~竜と愛の子供たち
 狼犬の竜、GSDの愛、ともにベアドッグとしての作業を追跡から追い払いまで一定レベルでこなせるが、残念ながら魁と凛のチームには遠く及ばない。魁と凛が他界した直後から次期ベアドッグの繁殖の計画を立てたが、二年かかってようやく子犬誕生まで漕ぎつけた。魁と凛の時代から数えると5年間待ち望んだ仔犬たちだが、3頭がすでに家庭犬グループとして関東・札幌方面に譲渡された。残った6頭からさらに注意深く選抜し意欲のエネルギー量が大きく我が強いほうから4頭をベアドッグ育成ラインに乗せる。魁と凛とともにおこなった作業を思いだし、この子らの一部と命を預け合ってヒグマの山を歩くかと思うと、神妙な気にさえなる。


 
 生後2ヵ月の仔犬たち。9頭よりベアドッググループに選抜された4頭。それぞれエネルギーが高く個性的な面々だ。今後数ヵ月間、躾や訓練をおこないながら各種テストやチェックをおこない、最終的なチーム分けや役割分担の判断をする予定。
現段階の予定では、
  左、BDチームA:飛龍(ひりゅう♂)&冴月(さえ♀)
  右、BDチームB:マゴロー(♂)&疾風(はやて♂)
 ベアドッグの活動の最小単位は2頭だが、発生した問題によっては、チームAとチームBを同時にコントロールしヒグマに対応することを想定した育成となる。教官犬(模範犬)は、コントロール性能・安定性ともに秀逸で、すでに若グマの追い払いをきっちりこなすようになった母犬の愛(Ai)になる。
      

      
     (↑)生後2ヶ月を過ぎたベアドッグの卵たち/湯ノ沢ベアドッグベースにて


《ちょっと気になる番外編》

 生まれた当初から、頭骨形状・気質その他諸々でオオカミの血を濃く受け継ぐと推察され、譲渡されるCD(家庭犬)グループからもBD(ベアドッグ)グループからも外したみどりちゃん(♀)だが、丁寧に関わっているうちに欠点は薄れ、環境への適応力・学習能力がとても高いことがわかってきた。いまだに読めない未知数の仔犬だが、当面、家庭犬としての育成スタンスをとりつつ、もしかするとベアドッグとしてダークホース的存在かも知れない。 


  










  
                   

                                                     
風倒木のログキャビン


200

+
Copyright (C) 2014 higumajuku. All Rights Reserved.
down
site map   プライバシーポリシー   特定商取引法に基づく通信販売業者の表示――― powerd by higumajuku