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《お知らせ》
ヒグマ看板
「ヒグマ出没!ガオー!」という従来の看板を改め、
「いこいの森」周辺では、
このような事実本意の看板を
設置しました。

ベアドッグ・ポスター
派手なデザインで
地味な活動をアピール
「ベアドッグ」




白滝ジオパーク
「白滝ジオパーク」

北海道・来たら白滝!

Liing harmony with bears side_right



羆塾(ひぐまじゅく)設立の経緯
 
 私が北海道の地を踏んだのは、二十歳の頃、大学進学に際してでした。理論物理学を志していた私は、日本で最も大学らしいキャンバスを持つ北大で理学部数学科に進み、苦学生ながらかなりのびのびと北海道の自然を満喫し学生暮らしを楽しんでいたと思います。転機は数学科に進んでしばらくした頃やって来ました。1年のオープンチケットを購入し、休学届けを出して探検部に居た悪友とともにブレイクアップ(解氷)直後のユーコン川をめざしたのですが、それがきっかけで活動の場所を北海道からアラスカに移すことになりました。拠点としたのは北米の最高峰マッキンレイを持つデナリ国立公園の南、ビッグ・スーと呼ばれる大河スーシットナ・リヴァーの支流の上流域。もちろん道などなく、ボートで川を100qほど遡ってようやくつける場所で、ヒトに一人合う間にクマに10頭遇うような恐ろしげで素晴らしいタイガの森でした。私のヒグマに対するいろいろな知識・体験・スキルの原型は、その森の日常で育まれたものです。

 ただ、アラスカの森はバカンスをのんびり楽しむような場所ではありません。氷点下50℃の厳寒の空気におののいた私は、逃げ場の避寒地としていまの場所に日本の拠点を定めました。ここも、真冬には何度か氷点下30℃を下回りますが、それでも、アラスカの鋭い刃物のような空気とは違い、小屋の外に出るのにいちいち得体の知れない恐怖心を抱く必要もありません。30℃なら、むしろ凛として心地よい気温に、いまは感じます。
 北海道・北大雪(きたたいせつ)山塊。水系でいうとオホーツク海に注ぐ湧別川水系の上流部にあたります。湧別川のポテンシャルというのは、日本全国の河川を行脚してきた私の目から見ても特別なものがあって、それは上流域に広がる北大雪の山のおかげでした。流域を通してひとつも都市がなく、沢は無数のイワナ(オショロコマとアメマス)を養い、陸には比較的健全にヒグマが暮らしていました。ここならば、アラスカとのギャップも最小限にできると、喜んで小屋の基礎の穴を掘ったのを覚えています。それが、確か2000年の11月です。
 ところが、そこから数えて3年後の2004年、まるで私の到来を待っていたかのようなタイミングで、当時の丸瀬布町にヒグマ用の箱罠が本格導入され、ほとんど迫害か虐殺としか思えないありさまでクマたちがバタバタと罠にかかり射殺されました。私の経験からは、もちろんこれは無知ゆえの蛮行にしか映りませんでしたが、それ以上に底知れないイヤな不安感を抱いたのを今でもはっきり記憶しています。ただ、その胸騒ぎが何であるか、それはわかりませんでした。
 そこで、私はいったんアラスカの活動を中断し、研究者にも教えを請うて北海道のヒグマを取り巻くいろいろを勉強しました。が、北海道の状況を知れば知るほど愕然として深くため息をつくしかありませんでした。北海道では、一般の人も、行政もハンターもメディアも、ヒグマという野生動物を遠巻きに誤認するばかりで、まるで実像を見ていません。過去の事例・事故を理解もせず、ただ山のモンスターのように怖れつつ、一方で畏怖も敬意もなくただ邪魔で迷惑な害獣として疎外しているように感じられました。

 それ以来、北大雪は避寒地ではなく、ヒグマとヒトの共生を模索する場となり、それまでの経験をフルに生かしてヒグマの生息地を這いずり回る調査と考察の日々となりました。一方で普及活動を、一方で例のイヤな不安感・胸騒ぎの正体が何であるかをつきとめる研究が開始されました。
 この地域では、「クマを無闇に殺すな」などと口を開けば、クマに対して以上に奇異の目で見られ、袋叩きに遇ったりしますから大変な作業であることは間違いありませんが、たった8年ではありますが、理解を示してくれる人やいろいろな形で助けてくれる人も現れて、「ヒグマを事実本意に正しく知ろう」という流れも少し出来上がりつつあります。
 曖昧に浮遊する迷信や根拠に乏しい思い込みではなく、調査などで得た事実をもとに正しい知識・認識から臨めば、ヒグマとの悶着や軋轢などというのはさして難解な問題ではないでしょう。
 ヒグマとの共生は、じつは単純で簡単なことです。まずヒグマをできるだけ正しく知る。そして知った事実から合理的に被害を防ぐ。人身被害も経済被害も解消すれば、この野生動物を殺す必要もほとんどなくまります。ですから、共生のカギはヒトが握っています。事実本意に知ろうという謙虚さがあるかどうか。そして、知った事実から合理的に対策をとれる理知あるかどうか。端的にいえば、この二点でしかありません。
 具体策の筆頭は、100年続いた捕獲一本槍から脱却することでしょう。被害があるから殺す、ではなくて、被害が起きないように工夫する。ここにシフトすべきと思います。武力・暴力ではなく、英知に頼るべき時ではないでしょうか。

 「自然豊かな北海道」―――このフレーズはたびたび見聞きしますが、開拓期の初め、自然が豊かだったからこそ、自然を粗末に扱う文化が北海道に生まれ、根付いてしまったような気もします。自然保護というのは、何をどのようにどこまで破壊するかという破壊論だと私は思いますが、北海道の場合、大陸由来の大農法基調の酪農が無計画に導入されたため、特に中山間地域で野生動物や自然環境との間に過剰な問題が生じているように思えます。

 先住民アイヌの時代、豊かで深い自然を頂いてきた北海道では、倭人による開拓が本格化して以来、野生動物・森林・河川に対して開発偏重の政策がとられ、ともすると搾取・破壊に終始する時代が続いてきました。ほとんどの原生の森は二次林となり、河川は直線化と減水傾向にさらされイトウなど一部の魚は絶滅が危惧されるまで生息域を失いました。北海道で開始されたサケマス産業にとってイトウ・アメマスなどの在来魚は「害魚」とされ、漁業関係者から粗末な扱いを受けた時代もあります。陸では、エゾオオカミ,、ヒグマに対して「害獣」の名の元に駆逐一本槍の政策がとられ、オオカミは既に絶滅に至りました。冬眠戦略も手伝ってかろうじて絶滅を逃れたヒグマに対しても、現在なお捕獲一本槍の対応が漫然としきたり化しておこなわれている地域がほとんどですが、そのスタンスで一世紀を経て、ヒグマによる被害・問題は解消するどころか、中山間地域ではヒトとヒグマの悶着・軋轢が高じたまま泥沼化して方策を失いつつあります。
 また、様々な理由で昨今では市街地・都市部郊外に軽率に侵入しフラフラと歩く若いクマも現れ始めています。言われて久しい猟友会ハンターの高齢化・空洞化・減少は解消のめどが立たず、いよいよ駆除一本槍はから本当に合理的なヒグマ対応へのシフトが必要不可欠となりつつあるのが現在の北海道の状況です。
 現代においてヒグマは世界的な保護動物にあげられ、北海道でも一部個体群が環境省および北海道のレッドリストに記載され絶滅が危惧されていますが、被害を放置したままの保護というのは困難であり、農家等の経済被害の解消と、特に人里内での人身被害の危険性の十分な減少を達成させなくては、保護には結びついていかない現実もあります。しかしながら、従来的な野生動物の駆逐・捕獲一本槍とは異なる総合的な対ヒグマ・リスクマネジメントをおこなっていくことで、ヒト側の被害の解消とヒグマの保護は両立できるものと思われ、それを実践していくのが今世紀のヒトの英知の役目と考えます。
 幸いにして、それは現代のヒトが意欲を持てば達成できる段階にあります。この100年間、科学者、活動家、クマ撃ちなどによってヒグマの生態や習性は徐々に解き明かされ、それにくわえヒグマの被害を事前に食い止める技術・資材も開発されてきました。これらの知識・技術は今後も進化を続けてゆくと思われ、またこの共生の時代・環境の時代、我々は進化させなくてはならないと思います。
 羆塾では、既存の防除方法に加え、効果的なヒグマの制御方法をテストし、立証しながら普及を試みてゆくスタンスをとっています。
 
 実際には、ヒグマの問題というのは被害の防止だけでは収まり切りません。ヒトの心の問題でもあり、科学技術が進んだ現在、この地球上での人類の生き様の具象化のような問題でもあるのではないでしょうか。将来的にヒトの心が変わらなければヒグマの問題をはじめとする環境問題は素直に解消してゆかないと思われますが、ヒグマという強獣とどう折り合いを付けてヒトが暮らすかは、すべての共生・共存あるいは隣存の試金石となり、また達成できれば、ヒグマとヒトの関係は共生・共存の揺るぎない象徴となることと思います。その大目標に向け、羆塾では、ヒグマを無闇に殺さず被害を解消する方策の模索と普及に重点を置いて活動を続けていきます。
 将来的に、ヒグマ問題の合理的解消を通してヒトが自然に対する畏怖を取り戻し、自然との調和を保ちながら謙虚な気持ちでこの地球上に暮らしてゆけることを望みます。

                                                      羆塾・塾生代表 岩井 基樹


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