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環境との調和をめざすリゾート
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はじめに




 北海道という言葉には他県にはない独特の響きがあります。それは、日本最北端に位置する寒冷な島であることに加え、比較的新しいラストフロンティアだった開拓期のイメージと、それでできあがった広大な大地と空のイメージがあるからでしょう。もともと本州で生まれ育った私自身、進学でこの島に渡った頃は、見るもの・聞く音・匂う風、出合うありとあらゆるものに心を躍らせたものでした。

 もともとアイヌ民族が暮らしてきたこの島ですが、現代の北海道は倭人による開拓精神によって切り開かれ日本的に急速に近代化・現代化を果たしてきました。ところが、開拓という輝かしい行為は反面、先住狩猟民族が永きにわたり調和してきた暮らしの終焉をもたらし、農耕民族による自然破壊の文化の強制移入のような側面もありました。森や川に依存しそれらに感謝しながら暮らす狩猟民族の文化から、いったん森や川を壊して管理しそこで生産される作物に恵みを求める農耕民族の文化。まったく相反する文化的な変化を国政主導で急速かつ強引におこなったため、ヒトと自然環境の間に様々な歪みを生じてきたのは否めないと思います。ほどなく経済的な合理性を追求した北米大陸の大農法の手法が取り入れられ、北海道各地に大規模な酪農地帯を築きました。

 しかし、開拓当初「自然との共生」などを言えば変人奇人扱いされたでしょう。比較的新しい街・札幌市でさえ長らく景観の美学を追究するだけで、共生の設計思想自体が存在していなかったのです。ただ、今世紀に入って地球規模の食糧問題・エネルギー問題・温暖化・野生動物問題などの問題が一気に吹き出した観があり、エコの時代・共生の世紀など表現はいろいろですが、つまるところ「自然との共生」が今世紀の人類に課された最大の課題となっています。札幌オリンピックで「美しい街」と歌われた町は今、ヒグマとの共生まで含めた新たなる段階に進みつつあるように思えます。
 じつは、世界各国のいろいろな現象を調べていくと、野生動物の扱いというのが、その国なり地域なりの自殺率・人種差別・いじめ問題などと深く関わっている可能性があるとわかってきました。自然のみならずヒトとヒトとの共生も果たさなくてはならないことになりますが、自分とは異なる他者に対して寛容を発揮できるヒトとしての度量、泰然とした余裕。ここもまた求められている気がします。
 出どころはいろいろですが、本質はひとえにヒトのこころの問題なのだと思います。

 そういう私自身も共生などとは無縁の昭和の高度経済成長期の落とし子のような世代なのですが、自分が生まれ育った時代も真摯に省みつつ、未来の若者たちに性悪で厄介なツケをまわしてはいけないと、素朴にそんなことを思う今日この頃です。

さて。
 近年、自然保護論は巷にあふれますが、じつは私の感覚は保護論というより破壊論です。何をどのようにどこまで破壊し、その環境を周辺の自然と調和させて継続的に利用していけるかという利用論と言ってもいいでしょう。大事なところは「継続的に」というところで、「地球レベルで永続的に」と大げさに言い換えてもかまいません。クマに関しても、ただ闇雲に保護しろというような感覚・論は持っておらず、お互いにどういう関係性を作りながら継続的に折り合いをつけてこの島に存続していけるか、というところが出発点となっています。この、自然や森や野生動物との調和の継続性については、東北のマタギあるいはアイヌ、イヌイットの狩猟文化に学ぶところが非常に大きいと思います。
 北海道における明治以来の開拓文化を否定すべきとは思えません。農業を否定するのはさらに愚かなことでしょう。しかし現在の北海道は、共生の世紀にふさわしい第二世代の文化にシフトする必要性に迫られているとも感じます。
 太古の昔から北海道でシカという食物を競合し大三角関係を形成してきた一角のエゾオオカミは倭人侵入後短い期間で絶滅させてしまったのでどうすることもできないでしょうが、残ったヒトとヒグマの関係はまだ手の施しようがあります。少なくとも、従来の駆逐政策では不可能だった「被害を解消しつつヒグマを生かす」「ヒグマを生かしつつ被害を防止する」、そのような道が残されていますし、その比較的公平で合理的手法の模索と開拓こそ、新しい北海道の開拓文化となり得るのではないでしょうか。
 端的に「小麦は砂漠発祥、稲作は森林発祥の農業」と言われますが、酪農はもちろん前者です。北米大陸のグレートプレーンズでその農業を大規模におこなうのは理に適うのですが、大森林におおわれた北海道にそれを導入するのは砂漠で稲作を始めるほど困難と無理があることでしょう。工夫や労力を厭わずおこなわざるを得ないと思います。第二世代の開拓文化は、北米大陸的な経済合理性よりも、むしろ従来日本に在る調和の農耕文化を取り入れた農業ではないかとさえ思います。自然環境にできる限りインパクトを与えず、折り合いをつけておこなわれる農耕、そしてヒトの暮らし。それは、最も厄介とされてきた強獣ヒグマに関しても、この100年で得られ蓄積されたヒグマの実像からすれば可能なことです。

 「ヒトとヒグマの共生」といえば、なんとなく現代的ないい響きですが、論だけなら絵に描いた餅と同じです。具体性を伴ったそれなりに明確な共生のイメージと、「どのように?」というやはり具体的な方法論が問題になります。
 これまで数多の研究者によってヒグマの生態や遺伝子学的な系統は解き明かされてきました。が、いざ実地のヒグマ対策となると北海道のどのエリアでも対策カードをほとんど持っていないという状態が続いてきました。羆塾は一定レベル以上の調査研究能力を有しつつ、むしろ現場の対策に秀でたグループをめざし2004年に設立しました。その方法論は、ベアドッグと呼ばれる「クマ対策に特化して訓練された犬」を最大限に駆使するところにあります。これが羆塾の提示する「How?」の解答です。
 羆塾の調査・普及活動は、あえて「世界で最もクマを殺す町」と異名をとる遠軽町で開始され、それゆえに得られたヒグマの新事実も蓄積されてきました。通常では見えにくい事実が、過剰で空前のヒグマ捕獲数と行政対応のありようによって、またベアドッグの導入によって如実に浮き彫りになったからです。この地で捉えられたヒグマの事実をもとに、従来のヒグマの生態学から社会学・心理学そして教育学にまで踏み出す結果となりました。それらの体系的理解は単に学術的な論としてあるのではなく、実際の現場でヒグマ対策をおこなう際の基礎としていろいろな角度・スパンで利用していますが、今後とも進化・深化を続けていかなければならないものです。

 物理学を志していた学生時代からアラスカの原野生活、そして近年は何故かベアドッグを用いた若グマの教育活動と、いろいろ摩訶不思議でややこしい経緯はあるのですが、とにもかくにもアラスカの避寒地として選んだ旧・丸瀬布町でにわかに始まったヒグマの無差別大量捕獲を目の当たりにしてクマの世界に投身してしまいました。ヒトとクマの問題が北海道においていかにこじれているかを日々思い知らされつつ、このままアラスカに戻ることなく北海道でヒトとヒグマの共生に努力する人生になりそうですが、北海道に棲む強獣ヒグマとの共生を果たしていくことで、ヒトが自然に対する畏怖を取り戻し、武力より英知、技術よりこころがそれぞれ優位にある状態で自然との調和を保ちながら謙虚な気持ちでこの地球上に暮らしてゆけることを切に望みます。

                     羆塾・塾生代表 岩井 基樹


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