■知床ライブラリー『知床のほ乳類Ⅱ』 斜里町立知床博物館編 2000
現在、世界遺産に認定された国立公園・知床における、ヒグマ保護管理の創生期の取り組み、問題点などが、臨場感のあるタッチで描かれている。電波発信機による調査、追い払い、学習放獣などについても書かれているが、餌付け・餌やりに関わる象徴的な例、ソーセージと呼ばれるようになったあるヒグマの末路には考えさせられる。 |
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■『BearAttacksⅠ/Ⅱ』Stephen Herrero
(『ベア・アタックスⅠ・Ⅱ』 嶋田みどり・大山卓悠訳 日本クマネットワーク解説) 2001
北米におけるヒグマによる数多の人身事故を詳細に調べ、「クマは何故ヒトを襲うか?」について、科学者の視点で分析してある。ヒグマの攻撃に関して、最も冷静に書かれた書だろう。96年、カムチャッカでの星野道夫の死についても触れてある。
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■『Lives of Game Animals』 Ernest Thompson Seton
(シートン動物誌4『グリズリーの知性』今泉吉晴訳) 紀伊國屋書店 1998
シートンの記述には、現代のヒグマの事実からすれば、確かに誤りがあるかも知れない。しかし、彼の野性動物への見識は高く、類い希な観察眼・分析力を持っていた人だった。彼から学ぶことは多い。その彼が、どうして見誤ったのかを解き明かすことで、ヒグマの重要な点が浮き出るように思う。
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■『生かして防ぐクマの害』 米田一彦(農山漁村文化協会) 1998
本の題名にすべてがつまっている。「殺して防ごう」とする前世紀の手法から、共生の世紀にふさわしい「生かして防ぐ」方法を模索している筆者。中国山地におけるツキノワグマに対するトライだが、多くの点でヒグマと折り合いを付ける方法論に通ずるところがある。 |
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■『熊のことは、熊に訊け。』 岩井基樹(つり人社) 2010
ベアアタックスから10年。異なった切り口の実践的書を必要とした。北海道、そしてヒグマの大生息地アラスカの原野における、筆者の数多の活動から導き出した対ヒグマリスクマネジメント。2000年よりの10年間、北海道・北大雪山塊でそれがどう機能するかを検証し、有機的に結びつけながら、まとめ上げてある。安全にベアカントリー(ヒグマ生息地)を楽しむためのノウハウがつまっている。
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■『クマよ』 星野道夫(福音館書店) 1999
96年、カムチャッカでヒグマの攻撃により死亡した星野道夫の遺稿をもとにつくられた写真集。ヒグマに関わるヒトには、研究者・レンジャーなどの現場専門家・ハンターなどがあるが、星野は写真家として世界で最もヒグマを知り、現場で空間を共にしていた人物だろう。アラスカのよき先輩であり友人であった道夫には、木訥ながら内なるエネルギーを感ずるが、彼の感覚をこの北海道でどう具象化するかが、現代に突きつけられた課題のようにも思える。
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